ステアリングヘッドの整備

 前書き(言い訳)

 いつも考えていることでしたが、読み返してみるとある種の「ふぇち」っぽさも感じられます。このまま皆さんに見ていただくのがいいかどうか疑いましたが、私にとってはバイクをいじくる上で優先順位第一事項でして、大事だけれどよく分からないことが多いです。

 もし一緒に迷考してくださる方ががあればとても心強くありがたいので、結局アップさせていただくことにしました。正直なところ冗長で袋小路状態の検討がたくさん残ってます。分かったところから日々改修していくつもりですので、ぜひお助け下さい。 

1 標準状態

 気持ちよく走れるかどうかにすごく影響するところなので、とても関心を持っています。XVの場合、標準の部品を組んで不満に思うのは「寿命の短さ」です。指定のヤマハグリスBを使って、できるだけ軽く組んでも本当にいいのは最初の1万キロ、あと5千キロをだましだまし乗れるかどうか、2万キロに至っては交換必至というのがこれまでの実績です。車重の軽いバイク、例えばSRXやRZRはもう少し長持ちしますが、XVの2倍も持ちません。

 個々人で感覚が分かれることですが、私は単に急停止でガタがなく、前タイヤを浮かせてステアしても引っかかり(クリック)がない、というだけでは「気持ちよく」感じられないです。「このうえなく軽い」と確信できる状態でないと、とたんにテンションが下がってしまいます。

 新しい部品を組んだら気持ちよく走るようになるので、その状態が少しでも長くできないかなというのが検討・作業の原点です。素の状態よりも高度な要求(例えばモアパワーとかより軽く、など)を実現しようということではありません(でした)。

 2 やってみたこと 

(1)使えるそうな部品の検討

ア アンギュラベアリング

  日本語ではJISで「アンギュラ玉軸受」、英語表記で angular contact bearing (角度を持って接している軸受?)です。最近のヤマハはこれが多く採用されています。

 ○ (分かりにくいかもしれない)私の理解

 普通のボールベアリング(深溝玉軸受)は,回転軸方向(スラスト方向、アキシャル方向)からの力を受けられないが、回転軸と90度の方向(ラジアル方向)の荷重には強い← ボールとレース(内綸、外輪)の接点がラジアル方向に並んでいるから。 

 アンギュラベアリングは、ボールとレースの接点がラジアル方向に対して一定の角度を持って配置されている(レースの形状で決定)ので、スラスト方向とラジアル方向の両方の荷重を受けることができる。

○ 分かりやすいメーカーの解説のページ

 以上は多分そんなに間違ってないと思う。以下についてはよく分からないまま、推測が続いています。請う御指導。

イ XV純正のバラ玉軸受

 カップ(外輪)+コーン(内輪)+バラ球で構成されている。部品配置は、アンギュラベアリングに類似している。「角度を持って接している」という点では同じというか、「アンギュラ」である。その点から、スラスト方向とラジアル方向の両方の荷重を受けることができる(はず)。ではナニが一体違うのか?ということになりますが、形から分かるのは「ボールのリテーナーの有無」です。が、ホントに違うのは、隣どおしのボールが、隣接している=バラ玉軸受、リテーナ(保持具、固定具)で隔てられているのでボールどおしが直接擦れ合わない、てところだと思います。バラ玉軸受のボールどおしの擦れ方考えると、逆回転で擦れているはずです。この逆回転擦れがどれほど問題になるのかはよく分かりませんが、あまり気持ちよくはありません。

 この軸受方式は、自転車のクランクシャフトの保持(ボトムブラケット、通称BB)や、自転車のホイールのアクスルシャフトの保持にも採用されています。自転車のように回転面を垂直方向=スラスト方向が水平 で使うのと、ステアリングヘッドのようにどちらかというと回転面を水平方向で使う場合とでは、後者の方が逆回転擦れの悪影響が大きいように思います。BB的な使い方=縦方向使用では、荷重は真下のボール集中的に作用するので、ほかのボールはそれほど力がかからないんではないかな?と思うからです。

ウ テーパーローラー軸受(円錐ころ軸受)

 外輪と内輪の間に円錐形(正確には円錐台柱形)のころがはさまってます。これも「角度を持って接している」=アンギュラ系=スラスト方向とラジアル方向を一緒にうけられる仕様です。いいところは接触面積(点や線に面積はないやんけ!てのはいいですよね?)が大きいので頑丈そうです。

 NTNのカタログ典拠ですが、アンギュラベアリングと比較すると大荷重に強く、高回転に向かない性格です。

 

品番

サイズ 内径・外径・厚み ミリ

許容動荷重 KN

許容回転数 グリス潤滑 rpm

アンギュラ

7005

25・47・12

10.7

16,000

テーパーローラー

4T-32005X

25・47・15

27.8

 7,900

 どうもテーパーローラーのほうがステアリングヘッドには向いているような気がします。

(続きです。080926)

(2)ヤマハの歴史の確認

 ベアリングのサイズは,こちらのサイトが参考になります。

ア 80年代前半まで

 おおよそ、

250ccクラスまで;156(YDS3のコード)−で始まる薄皿系レース+バラ玉;組立厚 約12ミリ

400ccクラス以上;256(XS11のコード)−で始まる厚皿系レース+バラ玉;組立厚 約15ミリ

でした。外径はいずれも48ミリです。ステムシャフト外径は上のベアリング内輪に接する部分が25ミリ、下のベアリング内輪に接する部分が30ミリです。

イ 80年代半ば以降

 大型車からテーパーローラー化が始まりました。部品番号でいうと93332というコードの部品です。これと同時に、外径が、上側;47ミリ 下側55ミリに変更になりますが、これはJIS規格にあわせたのだと思います。97年式のXV1100は、93332−00079と93332−00008のセットです。おかげで部品調達がとてもスムースになりました(これすごく大事)。1KTのレースキットはTPだったという話を聞いた覚えがありますが、確かめてはいません。

ウ 90年代半ば以降

 バラ玉のままだった125クラスも含めてアンギュラ化が進みました。一旦テーパーローラーになった大型車もアンギュラになってきています。アンギュラ化に当たってもJIS規格化がなされ、新しい車種のベアリングは規格品で揃います。

エ 例外

 一部の車種(TW225E 5VC3 04年式など)では、レースはそのままに、バラ玉をリテーナ付きボールに置き換えた仕様があります。「リテーナ、ボールベアリング」という品名で、「22F-2341E-00 」のように部品番号にEというコードがはいっています。

 この流れの中で、伝統?の、外径48ミリのベアリングを採用する車種はなくなりました。48ミリグループの最後が、SRV250のようです。最初のSRV(4DN1)はバラ玉でしたが、93年式の4DN2から外径48ミリの規格外サイズのアンギュラになりました。

(3)考察

 なぜこういう風になったのかを考えてみると、「組立コスト削減」が主たる理由と思われます。本来は、ベアリングの上にくる固定ナット(スロッテッドナット)及びボールレースカバーもセットで検討するべきなのですが、特にバラ玉と比べると、アンギュラベアリングは装着が簡単です。特にロックナットも含めると、非常に調整が簡単です。締め過ぎを防止できそうなので、寿命も期待できます。

 また、部品そのもののコストも安いのかもしれません。個々の部品の小売価格がどの程度原価を反映しているのか?ですが、ヤマハの小売価格比較では、アンギュラベアリングが最も安価です。

(4)今回使った部品

 今回は上記のSRV250(4DN2〜ルネッサ)の標準部品を使いました。部品番号は,パーツカタログでは93399−00040と93399−00039ですが、現在では「40」が「61」になっています。

 

3 評価

 今のところはまだ新しいので,何もいうことなし=最高モードです。グリスはヤマハBです。

 今後、耐久性をよく確かめようと思っています。バラ玉システムとの比較で、入っているスチールボールは同じサイズ(1/4インチ玉)だけど個数はバラ玉が19個、アンギュラが16個です。確かに2割弱少ないわけですが、アンギュラは隣と擦れないので長持ちするかもしれません。結果が楽しみです。

4 その他

 ステアリングヘッドベアリングについては、特に上のベアリングにほこり・水を寄せ付けない工夫と、ロックナットの仕組みも強い関連があります。

 これらについては、また改めてまとめようと思っています(ちょっと疲れました)。

5 ちょっとした追加

 これまで使っていたテーパーローラーベアリング(ナカイ商工さんお取り扱い)は結構長持ちしました。今回交換しましたが、下のベアリングに水が回っていたせいで変えましたが、フィールはそんなに悪くなかったです。アンギュラも含めてですが、上のベアリングの内輪の上下長が長い(厚みがある)タイプは、長持ちしそうな気がします。ステムシャフトとの間にシムを入れるのもそうですが、内輪とステムシャフトがしっかり収まっている(軽く圧入したような状態が適当と思います)と、ベアリングに掛けるプリロードが小さくても安定的に作動するので、「軽くて長持ちするベアリング」になるのだと思います。内輪の上下長が長いと、内輪が振れにくいし、ステムシャフトに当たる場合もより広い面で荷重が当たるのでまだガタがましなように思います。反対に、純正の皿(レース)の場合、内輪とステムシャフトがガタガタ(大げさに表現すれば)なまま、ガタをステムナットの締め付け(結果的に過大な)で修めてしまうと、ボールに過大な荷重を与えることになって、早く寿命が来るのではないかと思います。素人的対応としては、今のところ、ベアリング内輪とステムシャフトの間にシムを入れるのが最も現実的と考えています。(08,09,29)

 

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