
直進安定性の改善
バンプステア
中華ATVの主流であるダブルウイッシュボーン式のフロントサスペンションでは、そのジオメトリーの問題で、
上下動作によりトーイン(トーアウト)量が変化するバンプイン、バンプアウトが必要以上に発生し、
路面の凹凸、うねりに反応して、ハンドルは直進状態にもかかわらず、車体が勝手に蛇行してしまう現象が見られます。
極端な場合は40〜50センチもフロントが瞬時に右、または左にもっていかれ、いわゆる「横っ飛び」とよばれるほど激しい場合もあります。
こうした、バンプにより勝手に操舵すること、つまりバンプステアに起因する直進性の不安定さは、
トーイン、キャンバーまたはそれらの組み合わせの調整のみで解決しようとしても、根本的な改善とはなりません。
直進性が不安定になる中華ATVの多くのフロントサスペンションのジオメトリー関係は下の図のようになっています。
左側の上が1Gの状態(サスのばねが車重+ライダーの体重のみで釣合った状態)の上面図、下側が進行方向からみた正面図です。
右側はサスが沈みこんだ状態の上面図と平面図です。
つまり、サスが沈むとタイロッドにナックルが押し広げられてトーイン方向に変化する設定となっています。
もし、右か左の片側のタイヤだけバンプすると、ハンドルは直進のままにもかかわらず、
片側のタイヤだけ曲がろうとしますので、車体が不安定になります。バンプステアが出る車体を正面からみると、
タイロッドがアッパーアームに対して角度を持って取り付けられています。
トー変化は、車体を台に乗せて前輪を浮かせ、サスペンションの上側の固定ボルトを外して、手でタイヤを上下させて上から見て確認できます。

改善方法
タイロッドの角度をナックル側、ステアリングステム側もしくはそれら両方の取り付け高さを変更して、
トー変化が一番小さくなるところを見つけます。まずはここが調整の出発点です。
この時、車体を正面から見ると、タイロッドはアッパーアームとほぼ平行になっています。
上のバンプインの車体の場合、
@のステアリングステム側は下げる方向、
Aのナックルアーム側は上げることにより、トー変化を小さくすることが出来ます。
高さの変更は@Aのどちらか片側のみで可能な場合もあります。
バンプステアを意識して設計された車体は@かAのどちらかにワッシャーを挟む程度で調整完了となります。

ただし、残念ながら、今現在でもバンプステアを意識しないで設計されたと思われる車種かなり多く販売されています。
この場合、@Aのどちらかにワッシャーを入れる程度では調整し切れない程の高さ変更が必要な場合も少なくありません。
極端に高さを動かす場合、タイロッドエンドをピロエンドに変更するのも有効な方法です。
画像の車体は当初は極端なバンプインで、移動量が16mm必要でしたので、
画像のステアリングステム側でピロエンドに変更することにより10mm、反対のナックルアーム側にワッシャーを挟んで6mm持ち上げてバンプイン(アウト)ゼロとしています。

ステアリングステム側

ナックルアーム側
トー変化ゼロが出せたら、次にワッシャーを挟む枚数、または、カラーの長さを変更して、キャンバー変化を打ち消すようにトーが動くように微調整していきます。
キャンバー変化が無い(ロワー、アッパーのアームが等長)車体は、トー変化をなくすればいいのですが、
現実はロワーアームの方が長い車体が多く、バンプして、ポジティブにキャンバーが変化するのが一般的ですので、
それに合わせたバンプイン傾向で釣り合うところがあります。乗り味を確かめながら、ワッシャーを抜き挿しして調整します。
キックバックとは違う
ここで、改善しているバンプステアはハンドルも一緒にとられてしまうキックバックとは違います。
キャスターをねかせる、または、ステアリングダンパーはキックバックの対策には有効ですが、残念ながら、バンプステアの根本対策にはなりません。
シングルAアーム車にはすばらしい直進性が潜在しています
今の中華ATVフロントサスペンションの主流はダブルウイッシュボーンです。
一昔(1年?)前まではシングルAアームの車体が多く見られました。時代おくれ?いえそうではありません。
実は、そのシンプルな構造ゆえのすばらしい直進性が潜在しているのです。そのキーワードはトー変化の抑制とコントロールです。

写真は高ナットを利用してタイロッドのステム側取り付け位置をスイングアームのピボットより少し下げた位置にしています。
この変更により、当初スプリングが縮むとイン側に変化していたトーが、逆に若干アウト側に変化するように設定できます。
キャンバー変化はシングルAアームの場合、スプリングが縮むとネガティブ側に変化しますから、それを打ち消す設定に変更することが出来るため、
直進性が劇的に改善されます。それまでは、路面にギャップでもあろうものなら、横っ飛びしてどこにとんでいくか分からないような車体でしたが、
ここをトーイン量と共に調整することにより、ギャップが楽しくなる車体に生まれ変わりました。
余談ですが、Aアームのタイロッドが横切る“横棒”の部分はこのタイロッドの取り付け位置を下げる変更をした場合にうまくかわせるように曲げられており、これが本来の設計での設定のように思われてしかたありません。